憂鬱な午後にはラブロマンスを
全員の自己紹介が終わると洋介は直属の部下を一人欲しいと言ってきた。
部長の補佐をする者は仕事が出来る社員だろうと誰もが思っていたところ、洋介は自分で指名するといい珠子の名前を挙げた。
「待って下さい、部長。彼女はパソコン操作が苦手でとても部長の補佐など向いておりません。補佐でしたら他にも有能な社員がおりますのでその中から選んでください。」
「遠藤君、相川主任がこう話しているが君はどう思う?」
珠子は主任の言う通りだと思っていたし、万が一、自分が有能な社員だったとしても元夫である洋介と一緒に仕事はしたくなかった。
「主任のお言葉通りだと思います。」
「本人も自覚しておりますし、ここは人選は私にお任せを」
「部長である私に指図しようというのかな?君はいつから部長より偉い立場になったんだ?」
洋介はさっきまでの穏やかな表情とは違いかなり厳しい表情へと変わっていった。
「今朝の社内の様子を見させてもらった。玉の輿狙いの会話に盛り上がって掃除一つまともに出来ない社員を部下に持つ気はない。私に一番関心のない態度を取っている彼女こそ私の補佐には丁度いい。」
今朝の掃除の時の噂話を聞かれていると知った女子社員達は全員黙り込んだ。
そして、つい数十秒ほど前まで洋介に送られていた熱い視線も撃沈してしまった。