憂鬱な午後にはラブロマンスを
洋介の一言で珠子は部長の補佐となりデスクも移動となった。
洋介の大きな部長用のデスクの目の前が珠子のデスクの位置となる。
営業部では部長の机に向かって数列の机が並んでいる。その一番奥側の一番部長側にある机が珠子の仕事場となる。
そして、今日より部長の補佐となる為にこれまでの仕事は他の社員が引き継ぐことになった。
「まだ、引継ぎ作業をしているのか? 俺の仕事はたまる一方だが。」
「もうすぐ引継ぎ作業は終わります。もう少しだけ待って下さい。」
洋介の冷たい物言いに珠子は胸が痛みながらも必死に他の社員へと引き継ぎ作業をしていた。
急な話に簡単に仕事の引継ぎが出来るものかとかなり腹立たしかった珠子だが、そのおかげで暫くは社長の俊夫から求婚されたことを忘れていられそうだ。
そして、やっと引継ぎ作業が終わったという頃に、社長秘書の小田が珠子のところへやって来た。
「遠藤部長、遠藤珠子さんをしばらくお借りいたします。」
「君は社長秘書の小田さんでしたね。営業部社員に何の御用でしょうか?」
「それは申し上げられません。社長がお呼びですよ珠子さん。」
小田の落ち着いた微笑みと意味ありげな物言いに営業部の注目を浴びていた。
珠子が社長に呼び出されたのはこれで2回目だ。
いったいどんな用で呼ばれるのか誰もが興味深々になっていた。