憂鬱な午後にはラブロマンスを
「なんか怪しくない? 社長に呼び出されたの今回が初めてじゃないでしょ?」
「それに、呼び出されても仕事のはずないし、何かあるのかしらね?」
「でも、あの遠藤さんよ。仕事一筋の女っ気のない人じゃない。」
珠子の噂はあまり良いものではなかった。
それもそのはず。結婚に失敗し仕事に集中したい珠子は噂話には興味を示さず男性との噂もない状態だ。
そのせいか男日照りが続いているとまで侮辱的なことを言われていた。
「いい加減にしなさいよね。珠子は真面目に仕事をしているだけじゃない! でも、それが今回認められて部長の補佐になったのよ。」
郁美は友達の珠子が陰口を叩かれるのをかなり嫌っているようだ。
居酒屋に一緒に飲みに行っただけあって友人なのだろうと洋介はそう思った。
それより気になるのは社長からの呼び出しだ。
結婚の申し込みをしている珠子とは深い関係にあるのだろうかと、二人がどのような付き合いをしているのかが気になり仕事が手につかない。
「部長、こちらの資料が頼まれたものです。」
「商品一覧か。これは工場から受け取った資料そのままではないのか?この数字は在庫数には顧客の商品確保の分も含まれているのか?ハッキリした数字を出してくれ。それから、生産数と受注とこれからのキャンペーンなど全ての資料を分かりやすくまとめたものを出すように。」
「今日中にですか?」
「当たり前だ。君はかなり優秀な社員と聞いた。相川君、頼んだよ。」
日頃、他の社員がミスをするたびにお小言を言っていた相川としては言い返す言葉がなかった。