憂鬱な午後にはラブロマンスを
いつもと変わらない職場の光景。
珠子は自分のデスクで相変わらずパソコンと格闘し、慣れない作業に没頭していた。
「いい加減この程度の資料は短時間で出来ないものなの?」
「相川主任、すいません。どうしても苦手なもので。」
「だったらもう少しスムーズに作業が出来る様にパソコン教室にでも通ったらどうなの?」
「......考えておきます」
相川主任のお小言はいつもの事だ。だから、珠子は主任のお小言程度ではまったく動じない。
マイペースで自分の出来る範囲で仕事に集中する珠子は、作業中は周りには目を向けない。
「関心するわ。私なら主任にあんなセリフ言わせないわ。」
「仕方ないのよ。私がパソコンを苦手にしているから。」
「そうね。今の時代はパソコンが出来なければ仕事にならないからね。じゃ、頑張ってね、珠子♪」
郁美にしてはあっさりと会話が終わったと珠子は首を傾げていた。
いつもなら、仕事をさぼる口実に「操作を教えてあげる」と言いながら珠子のデスクでかなり無駄口叩いて遊んでいくのに。
郁美にとって今日一番の話題で、その新しい部長の情報でも手に入ったのだろうかと思わせるほどにかなり上機嫌の様子だった。
「森田君!! この資料はどうなっているんだ?! 印字が薄すぎて読めないじゃないか! 印刷をし直したまえ!遠藤君!君もだ!まだ資料出来ないのかね?!」
新部長の噂話で一人盛り上がっている郁美を快く思わない今の部長から珠子へ雷が落ちていた。とんだとばっちりだ。