憂鬱な午後にはラブロマンスを
社長室から珠子が戻って来たのは相川が洋介に資料を再提出していたその時だった。
ゆっくりとした帰還に周りの目は更に一層冷たい物へと変わっていく。
「随分時間がかかったわよね?」
「いったい社長からどんな話を聞かされたのかしら?」
「彼女の憂鬱な顔を見てたら分かるじゃない。」
「あれって仕事が出来ないからそろそろクビってことじゃないの?」
周りの無責任な発言に洋介は陰口の中心である女性社員へ睨みをきかせた。
すると女性社員達は持ち場に慌てて戻り仕事に取り掛かっていた。
無駄口の多い職場だと思いながらも珠子の様子が少し違っていることに気になっていた洋介は珠子を呼びつけた。
「何でしょうか部長」
「打ち合わせをしたい。会議室は使えるのか?」
「そうですね・・・・今のところは使用する予定はない様なので大丈夫かと思います。」
ホワイトボードを見て確認しながら珠子は今日一日会議室が空いているのを確認していた。
珠子の目の先にあるボードを見て、洋介はそこで会議室や社員らの状態まで確認できるのを知った。
「営業マンは殆どが外出中なのか。それで、女性社員らは何故ここに留まって無駄口ばかり叩いている?お喋りするのがここの女性社員の仕事なのか?」
洋介の風貌とは違いかなり厳しい口調に女性社員らは新たな部長への期待を失くしかけていた。
珠子はこんなにも厳しく当たる洋介の姿を見たのは初めてで少し戸惑いながらも洋介をこの場から早く連れ出そうと会議室へ行くことをほのめかした。