憂鬱な午後にはラブロマンスを
洋介は窓の外を眺めながら呼吸を整え落ち着かない気分を何とか鎮めていた。
横目で珠子を見ながら以前と変わりない姿につい結婚していた当時と重なりそうな思いに駆られた。
しかし、今、目の前にいるのはもう妻でも恋人でも何でもない他人の女なのだと洋介は自分に言い聞かせていた。
どんなに変わっていなかったとしてもそれは姿形だけでありお互いの気持ちや関係はもう以前とは違うのだと洋介は思い知った。
珠子の平静な様子に再会してから高ぶる気持ちを持ち合わせているのは自分だけなのかと感じた。
離婚を切り出したのは珠子なのだからもう昔の事は忘れてしまったのだろうと、洋介は後悔することすらできなかった。
「ここでは頻繁に会議が行われているのか?」
「そうですね。企画会議にはよく利用されていますし、得意先開拓や商品開発などいろいろな会議がありますし、」
「分かった。もういい。資料を。」
再会してもなお他人行儀な珠子の態度が気に入らない洋介は、これから先もこのような関係のまま過ごすのか気になった。
珠子が社長に呼び出されている間に相川に資料を作成させ1部複製させていた。その複製した1部を珠子へと手渡すとそのまま珠子の腕を掴んだ。
「何をするんですか?」
「いつまで他人行儀なことをしているつもりだ?」
「あなたとはもう他人かと思いますが。」
珠子は洋介から目を反らすと俯いたまま掴まれた腕を引っ込めようと必死だった。
そんな珠子を見て洋介はすっかり嫌がられているのだと思うと掴んでいた手を離した。