憂鬱な午後にはラブロマンスを
会議室では資料を片手に必死に説明する珠子の姿があった。気になる点について洋介は次々と珠子に質問するが珠子は一社員に過ぎず洋介が欲しがっている答えを出せずにいた。


「君はこの会社に入社して何年になるんだ?」

「4年目になります」


洋介は年数を聞くと少し溜息をついて資料を眺めた。そして、珠子の顔を見るとまた溜息を吐いた。

珠子はそんな態度をして見せる洋介に腹が立ちその場から出て行きたくなった。

それでも仕事だからと必死に怒りを鎮めようとしていた珠子に洋介は更に冷たい視線を向けた。


「俺が欲しい答えを出せていない。数日中に調べて提出するように。それから、この在庫と出荷、工場から入る数字を分かりやすくデータ化して欲しい。これはどれくらいでデータ化出来るか?」


珠子は苦手な分野な上にそのような仕事は自分一人の力では無理だと承知している。

沢山ならんだ数字を見ながら、これをどう分かりやすくすればいいのか理解に苦しんでいた。


「どこが難しい?」


自分には能力がないと悩んでいる様子に珠子は少し顔を赤く染めながら俯いてしまった。

部長の補佐をするはずの人間がこの程度の仕事も熟せないのかと笑われそうで珠子は黙り込んでしまった。

そんな珠子の様子を見て、洋介は珠子がパソコンを得意そうにしていなかった朝の出来事を思い出していた。
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