憂鬱な午後にはラブロマンスを

「パソコン操作は苦手なのか?」

「ごめんなさい。私よりもっとパソコンに精通している人は沢山いるわ。その人を補佐にした方が良いと思うの。」

「仕事に私情を挟むような補佐は必要ない。これは部長命令だ。もし、パソコンが苦手なら克服すればいいだけのことだ。」


珠子もこれまで何度もパソコン教室へ通っては挑戦しようとしていた。しかし、ペースの速い教室では授業について行けなかった。

それ以来珠子は自分のペースで少しずつ作業をすればいいのだからと、殆ど開き直りの精神でパソコンの作業をしていた。

しかし、そんな珠子のペースとなかなか上達しない技術にこれまで主任の相川はかなりイラつきを見せていた。


「今日からパソコンの勉強をして貰おう。俺が下書きするからそれをそのままパソコンに入力すればいい。詳しい事は残業の時に説明する。」

「残業ですか?!」

「残業出来ない用でもあるのか?」


珠子は少し悩みながら残業することを渋っていた。残業を渋っているかと思えば、問題なく残業をすると言い直しては何かを思い悩んでいる様子だった。

ハッキリしない態度に洋介は資料をテーブルの上に乱暴に置いた。

その音に珠子はビクリと体を強張らせた。


「残業したくない理由があればハッキリしてくれ」

「いいえ、今日は予定があるので残業は明日からなら、」

「仕事が出来ないのに夜の予定だけは優先させるんだな」


洋介はその予定が社長の俊夫との約束ではないかと疑った。
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