憂鬱な午後にはラブロマンスを

「珠子、残業なの?」

「うん、ごめん。郁美は先に帰ってて。」

「飲みに誘おうって思ったのに。しょうがないか。」


どちらにしても珠子は俊夫と食事デートの予定を入れていたから、残業でなくとも郁美とは飲みに行けなかった。

もし、残業が無ければ郁美と一緒に飲みに行けない理由を何と説明すれば良いのか。案外、残業は言い訳作るのに助かったかもしれない。

そう思うと珠子はホッとした。


「無駄口叩く暇があったらこれを一時間以内で作成しろ」


洋介が郁美に睨みを利かせると珠子に手書きの資料を渡した。それは、単純な表ではあるが、今年に入ってからの営業担当別売り上げ表でとても重要なものだった。


「表作成後はそれをグラフ化してもらう」

「分かりました」


珠子はこれくらいならと急いで表の作成に取りかかる。

入力が遅いわけではない。ただ、苦手意識が強いだけに焦りが出て失敗してしまうことが多いだけだ。そして、失敗すると焦ることで更に失敗の上塗りをしてしまっているのだ。


「え、なんで、こうなるの?!」


洋介が指定した時間内で終わらせようと、焦るあまり作ったはずの表が狂ってしまった。

資料を見ながら元通りにしようとあくせくしていると、洋介が珠子のパソコンの画面を確認に来た。
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