憂鬱な午後にはラブロマンスを
洋介のピンチ
それからというもの洋介は珠子のパソコンの特訓も兼ねて就業時間後に営業部の様々な資料をデータ化させていた。
毎日遅くまで二人で特訓していると昔に戻った気分になりお互いに自然と口数も増えていく。
そして、その口調も次第に昔のように戻ってしまうことも。
「疲れた、今日はその辺で区切りをつけて飯を食いに行こう。」
「ちょっと待って。もう少しで終わるのよ。」
「どれくらいで出来そうか?」
「あと10分かな」
「じゃあ 俺はちょっと便所行って来る。」
「ちょっと、トイレって言いなさいよね。相変わらず汚いんだから。」
「便所は便所だろ。」
嫌そうな顔を洋介に向けると、そんな珠子の顔を見て笑いながら廊下へと出て行く洋介。すると、エレベーターの扉が開く機械音が聞こえてくると、エレベーターから降りて来た俊夫の姿が目に入った。
こんな時間に営業部に何の用かと聞きたい洋介だが、聞かずともその答えは分かっている。珠子の様子を見に来たのだ。
最近の毎日の残業に俊夫はかなり洋介を敵対視している。
「やあ、遠藤君。今日も彼女は残業なのか?」
「ええ、最近では随分マシになりましたが、なにせ彼女は仕事が遅いですからね。かと言って、私が手伝う訳にはいきませんから。他の者への示しもつきませんし。」
「それに関しては理解している。しかし、毎日残業でなくともいいだろう?それか、もう少し早く帰せないのか? 今日はどうなんだ?」
俊夫が珠子とデートをしたがっているのを知っているだけに洋介は珠子を早く帰すつもりはなかった。