憂鬱な午後にはラブロマンスを
それに、今日は仕事を終えたら洋介が珠子と一緒に食事へ行く約束を取り付けた。だから、絶対に珠子を早々に退社させるわけにはいかなかった。
「今日も彼女は終えていない仕事がまだ残っています。多分、社長と出かける時間はないでしょうね。朝まで一緒というのなら別ですが。」
洋介は珠子と俊夫の関係がどこまでなのかを探るつもりでそんな言葉を発した。それに気付かない俊夫でもなかった。
だから、俊夫は洋介の顔を見るとフッと笑みをこぼし腕を組み洋介を見下すような姿勢で威嚇するような態度を見せる。
「そうだな。朝までは時間はたっぷりある。急いで帰ることもないか。遅くなれば直ぐにベッドへ入れば良い事だ。」
本当に関係があればそんな強気のセリフをわざわざ言う必要はないだろう。きっと、まだ珠子は俊夫を受け入れていないと洋介はそう感じた。
「仕方ない、今夜は諦めるとしよう。だが、彼女は遅くならないうちに早く帰してくれ。夜道が心配なんだ。」
「分かっています。私が送り届けますからご安心下さい。」
「タクシーを呼べばそれで十分だよ。元夫の遠藤君。」
珠子は自分のものだと言わんばかりの態度をとる俊夫に腹を立ててもどうしようもないと分かっていながらも盾突く態度を取ってしまう。
相手は洋介を雇っている会社の社長なのだ。関係を拗らせると会社から追い出されかねないと言うのに。
冷や汗が流れる洋介はトイレへ行くことを忘れそうになった。