憂鬱な午後にはラブロマンスを
「洋介は何が食べたいの?」
「・・・手料理かな」
「え?」
洋介の意味ありげな言葉に珠子は戸惑ってしまった。
もしかして今の奥さんは手料理を作らない人なのだろうかと思った。
珠子は結婚していた時は洋介に喜んで貰おうと毎日料理を作るのが楽しみだった。
洗濯するのも掃除するのも洋介が喜んでくれるならばと家事仕事は嫌ではなかった。
だけど、洋介は今の妻に何もしてもらえないのかと思うと、そんな女と結婚した洋介に怒りをぶつけたくなった。
「あら、私の手料理より今の奥さんの手料理の方が美味しいんでしょ?だから結婚したんでしょ?」
「・・・そうだな。」
「奥さん、家で待っているんでしょ? 早く帰ってやったら?」
家に妻が待っているとしても珠子は本当は帰したくない。だからと、洋介をここで引き留めて未練がましいと思われるのも嫌だった。
本当は未練タラタラなのに見栄張って平気なふりをするのはかなり辛い。
でも、離婚したいと言ったのは珠子だ。そんな珠子が今更洋介と別れたくなかったとは言えない。
一緒に過ごしたいとも言えないし一緒に食事したいとも言えるはずはない。
だから、ここは別れた妻らしく微笑んで洋介を奥さんの元へ帰すことだ。