憂鬱な午後にはラブロマンスを
洋介と別れた帰り道、珠子は一人帰宅する寂しさに胸が苦しくなりそうだった。それがどんなに辛い事なのか誰にも分かりはしない。
こんなに辛い想いするのだったら離婚なんてしなければ良かったと今更ながらに後悔していた。
自宅アパートまでの帰り道に唯一あるコンビニへと寄った。
食事の準備をする気分になれないし今は飲みたい気分だった。
妻の待つ家へ帰った洋介はきっと温かい料理と愛する妻の笑顔に今頃は幸せな時間を過ごしているのだろうと、そんな想像をしていると珠子はやりきれない気持ちなってしまいお酒を何本も買ってしまった。
「今夜も飲むぞ!」
珠子の辛い気持ちを慰めてくれるのは今はお酒しかなかった。
以前は郁美と会社帰りに飲みに行っていたけれど、今は毎日残業ばかりで郁美と一緒に居酒屋へ行く時間さえ取れない。
万が一、時間にゆとりが出来ればその時は俊夫からの誘いがある。結局は郁美と飲みになど行ける状態にない。
最近の息の詰まる生活に疑問を持っていた珠子だが、コンビニのお酒を飲めば再び復活し勢いのある珠子を取り戻せていた。
だから、この夜もお酒を買って帰る。
「さあ、飲むぞ!」
勢いで帰宅する珠子を洋介は尾行しながら様子を窺っていた。珠子の元気そうな顔に洋介は「相変わらずだな」と嬉しそうに見ていた。
洋介の珠子を見つめるその瞳はとても熱く、今にも抱きしめたいと思わせる目をしていた。