憂鬱な午後にはラブロマンスを

珠子がアパートの部屋の中へ入っていくのを確認した洋介は自分のアパートへと帰って行った。

洋介は珠子のアパートが自分のアパートと近所だったとは思いがけない事だった。何も知らずこれまで暮らしてきたのだと、これも何か不思議な縁があるように感じた。

不思議な縁と言うよりも、これこそが二人が離れられない運命ではないのかと洋介はそう信じたかった。

自宅アパートへの帰り道、さっき珠子が買い物に寄ったコンビニへと入った。

自宅へ帰っても誰も待っている者はいず暗く寂しいだけの部屋があるだけだ。

洋介もコンビニで夕飯の代わりになるものを買って帰ることにした。

洋介の自宅アパートは、珠子が住んでいるアパートと大して変わらないボロさで、部屋も狭く珠子の部屋と同じような寝室に茶の間兼ダイニングキッチンがあるくらいだ。


「ただいま」


誰もいない真っ暗な部屋だが必ず声をかけて帰宅する。

茶の間の電気を点けると小さなちゃぶ台代わりのテーブルの上に置いている珠子の結婚式の写真が目に入る。

一番幸せな時の写真だ。

木製のアンティークな円形フォトフレームにウェディングドレス姿の珠子の写真が収められていた。

フォトフレームはどこで購入したのか洋介のような男性には不似合いな目の覚めるような青い額縁だ。

洋介は写真に微笑みかけるとそのまま座り込んだ。


「かなり不味いかな?」


帰宅した洋介は急に体が鉛のように重く感じた。

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