憂鬱な午後にはラブロマンスを
「風邪でも引いたかな?」
洋介は珍しく風邪の様な症状に見舞われた。喉の奥に痛みを感じ少し咳も出だした。頭痛はするがそれよりも体が自分の体の様ではなく誰かに乗っ取られているような重みを感じ茶の間に座り込むと洋介はそのまま横に寝そべってしまった。
「ちょっと、やばいぞ。」
自分でもこの体調はかなり良くないと分かりながらも体が他人のもののようで動かせない。
それに意識が遠のく様に睡魔が襲うと自分の力では何も出来なくなっていた。
茶の間で横になったまま動けなくなった洋介はあっという間に眠りについてしまった。
洋介がそんな状態に陥っているとは知らずに珠子は翌朝いつも通りに会社へと出勤した。
珠子が出勤すると何時もなら部長のデスクには洋介の姿があるのに今日は珍しくまだ洋介はそこにいなかった。
社長からの呼び出しでもあったのかとも考えた珠子だったが、気になってタイムカードの確認に営業部入り口のカウンターへと行った。
そこに並んでいるタイムカードから洋介のカードを引き抜き確認すると、昨夜の退社した時の刻印のままで出社時の刻印はなかった。
そこで、珠子は洋介からの遅刻か欠勤の届けが出ていないかを人事課で確認したところ、洋介からの連絡は一切なにもないという事だった。