憂鬱な午後にはラブロマンスを
洋介の住所を書き留めたメモ用紙を片手にアパートを探そうとした。
そこで珠子が気付いたのが、そこに書かれていた住所は珠子のアパートの近所だった。何故、洋介がそんな近くのアパートに住んでいるのか不思議だったし、結婚したのにアパート暮らしというのも腑に落ちなかった。
珠子は住所を頼りにアパートを探し出すと洋介の部屋のドアを叩いた。しかし、まったく反応がなく既に出社したのだろうかとドアを開けてみた。
すると、鍵はかかっておらずドアが開いた。
ドアを開けても室内はとても静かで誰かいるような様子はなかった。
しかし、玄関にはいつも洋介が履いている靴があったが、室内は暗いままで洋介がそこにいる様には思えなかった。
人の気配がないのに鍵はかけられていない。しかも、室内は暗く静かだ。嫌な予感がした珠子は靴を脱ぐと急いで室内へと入って行った。
「洋介? いないの?」
玄関から上がっていくとそこは台所になっていてその奥に小さなテレビが置かれていた。
そのテレビのところからうめき声らしきものが聞こえた珠子は急いで声のする方へと近寄った。
すると、そこには昨夜退社した時の服装のままの洋介が横になっていた。
「洋介?!! 大丈夫? 洋介?!!」
珠子が洋介の体を揺さぶり起そうとするとその体の熱さに驚いてしまった。
珠子はあたりを見渡し救急箱が無いかどうかを確認したがそれらしいものはない。
台所を見ても奥さんが炊事をしている様子もないし食器類も数少なく家族がいるような台所には見えなかった。
すると、テーブルの上に置かれているフォトフレームに気付いた珠子はそれを見て驚いてしまった。
珠子がベッドの頭上に置いている結婚式の写真と同じ物を洋介も未だに持っていてくれたのだ。