憂鬱な午後にはラブロマンスを
珠子は思わず写真を手にしたが、洋介の唸り声にハッと気づき今はそんな事をしている暇はないのだとフォトフレームをテーブルへ戻した。
そして、洋介のジャケットを脱がせると洗面所へと行きタオルを探した。洗面所へ行ってもタオルなど見当たらない。
洗濯機は置かれているがその横にある洗濯籠には洗う順番を待っている洗濯物が山の様に積まれていた。
「奥さんはいないの?」
珠子は使えそうなタオルを探すも見当たらず洗面所から出るともう一つの部屋のドアを開けた。
そこは寝室になっていてベッドが置かれているだけだった。それもセミダブルサイズのベッドが一つ。
「失礼しますね、奥さん、いないの?」
ベッドの上にパジャマが脱ぎ捨てた状態で置かれていた。ベッドの横にプラスチック衣装ケースが置いてあるのが目に入った。
そこには下着やタオル類が入っていたが、その置かれている状態があまりにもガサツでどう見ても男の一人暮らしの様に感じる。
とても、奥さんが待っている部屋には見えず珠子の手に力が入ってしまう。
「今はそんなこと考えている暇はないわ。まずは洋介をベッドへ運ばなきゃ。」
珠子は着替えとタオルを持って洋介のところへと急いだ。そして、額から脂汗を流す洋介をタオルで拭きながらシャツのボタンを外していった。
シャツが既に体温で熱くなっていてシャツを脱がす珠子の手までその熱に侵されそうだ。
汗で濡れる洋介の体に不謹慎にも珠子は心臓がドキドキしてしまった。今はそんな事を考えている時ではないと自分に言い聞かせ必死に着替えを済ませることに気を集中させた。