憂鬱な午後にはラブロマンスを

何とか洋介の着替えを終わらせた珠子はベッドまで運ぼうとしたが、珠子の様な非力な女ではとてもベッドまで運べない。
仕方なく病院へ往診を頼み、お医者様に来て貰った時に手伝ってもらおうと考えた。

病院へ往診の電話を掛けて暫く待つと、往診にやって来た医者に早速洋介をベッドへ運ぶ手伝いをしてもらった。来て早々に申し訳ないと思ったものの、珠子一人の力ではどうにも出来ないのだから。
医者と二人で寝室のベッドまで洋介を運び、何とか洋介を布団に寝せることが出来た。
そして医者に診察してもらうと一安心といったところだ。


「暫くは安静にして栄養のあるものを食べさせてください。それから、お薬はどこの調剤薬局でも受け取れますからここから一番近い薬局で貰われて構いませんので。出来るだけ奥さんには旦那さんに着いて貰っていた方が安心ですから。」


『奥さん』と言われると少し胸が痛む珠子だが、今はそんな事を気にしている時ではない。洋介の容体が早く良くなることを祈るだけ。


「ありがとうございました」


医者を見送ると珠子は安堵してその場に座り込んでしまった。

一時はどうなるのかと心配したが、診察の結果、洋介は風邪との診断だった。ただ、茶の間に倒れていたところを見ると相当に体が弱っている可能性があるからしっかり養生させるようにと注意を受けた。
もし、回復が遅れるようならば他の病気の疑いもあるから一度病院へ検査を受ける様にと言われてしまった。

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