憂鬱な午後にはラブロマンスを
考えてみれば洋介は新しい会社で新しいポジションで責任ある仕事を任されているのに、そこに別れた元妻がいて仕事はやり難かったはず。
その上にパソコン操作の苦手な珠子に付き合って毎日遅くまで会社に居残りをしていたのだ。心身ともにかなり迷惑をかけてしまったと珠子は落ち込んでしまった。
洋介が倒れたのは、珠子が迷惑をかけたことが大きな原因ではないかと心苦しくなってしまった。
珠子はそれから部屋の中を物色した。洋介の着替えをさせようにもどこに何があるのかさっぱり分からない。しかも、洋介の部屋は結婚した夫婦が暮らしている様子はない。
もし洋介の左手の指輪が本物で送った相手がいたとすれば妻とは別居したのだろうかと、物色する手を止めて珠子は座り込んでしまった。
「片づけなくちゃ」
医者に注射を打って貰ったことで洋介の呼吸はかなり楽になっていた。胸が苦しそうだったけれど今は落ち着いている。
そんな洋介を横目に洗面所へと行き洗濯物を洗濯機の中へと放り込み洗剤を入れて電源ボタンを押した。
かなり洗濯物が溜まっていたのは、これは、最近毎日の様に残業したことで家事をする時間が無くなってこのあり様なのかと珠子は洗濯物の多さに頭を痛めた。
「バカね。奥さんに出て行かれてこうなったのは自業自得だろうけど。・・・洋介ってバツ2になるつもりなの?」
浴室のドアを開けると、そこも風呂に入ったままの状態で換気がされていない。湿気で臭くなった風呂場の窓を開けて換気をすると洗面所から茶の間の窓まですべての窓を開けた。
室内の空気が淀んでしまっていることに珠子は洋介が一人暮らしをしていたのだと分かる。
そうとなると、洋介を一人置いては帰れない。