憂鬱な午後にはラブロマンスを

アパートへ戻ると買い物袋をそのまま床に下ろすと寝室へ直行し洋介の傍へと駆け寄った。寝息をかく洋介はまだ眠っていた。けれど、最初に見た時にくらべかなり呼吸が楽そうでぐっすり眠っていた。

少し汗をかいたらしく額が少し光っていた。額に手を当ててみると少しだが額は湿気ていた。汗をかいたと分かると首筋にも触れてみた。

医者が打ってくれた注射が効いたのか頭だけでなく首も汗で濡れていて、熱かった肌は熱が少し下がっているのが珠子の肌を通して分かった。

洋介の体を横に向け背中の具合を確認するとやはりパジャマが汗で湿気ていた。
着替えをさせようにもよく眠る洋介を起こすのは可哀想だと思い、衣装ケースからタオルを取り出し背中と胸にタオルを入れ込んだ。

湿気た服を着たままではまた具合が悪くなる。それよりはタオルを当てていた方がまだマシだった。


「今の内に片づけの続きとおかゆでも作りましょうね」


珠子は眠る洋介の額に手を当てもう一度発熱具合を確認する。熱は下がり気味だと感じると一安心した珠子は、風呂場へと行き洗面器に水を入れ寝室へと運んだ。

衣装ケースからタオルを一枚取り出し洗面器の水で濡らすと洋介の額をタオルで冷やした。


「だいぶん熱は下がっているけど、でも、辛いよね。ごめんね、遅くなって。額、気持ちいいでしょ?」

「う・・・うん」


眠っているはずなのに洋介は無意識の内に返事をしていた。
夢でも見ているのだろうと珠子は微笑みながら台所へと戻って行った。

テーブルに置かれているフォトフレームが目に入ると珠子はこの写真をどう解釈したらいいのかを悩んでいた。
珠子もベッドに洋介との結婚式の写真を未だに飾っている。

それは洋介を愛しいと思っているからだ。
たとえ離婚していても珠子は洋介を忘れることは出来なかった。

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