憂鬱な午後にはラブロマンスを
洋介がこの写真を飾っているのは珠子と同じ気持ちがあるからなのだろうかと期待したくなる。
けれど、そうなると左手の指輪の女性は一体どこにいるのだろうかと現実に引き戻されてしまう。
どんなに写真が飾られていようが洋介の左手には指輪がはめられているのだ。
無駄な期待はしない方が自分の為だと言い聞かせながら珠子は台所の片づけを始めた。
部屋の換気を終え、洗濯物は全て洗っては干し、台所のシンクの汚れは見事に洗い流した。
狭い部屋だからそれほど時間はかからずに掃除も洗濯も炊事も全てを終えた珠子は寝室へと行った。
そして、まだ眠る洋介のベッドの前に座り布団に突っ伏してしまうと、珠子はいつの間にか眠ってしまった。
どれくらい眠っていたのか珠子が気付いた時、外は薄暗くなっていてしかも布団の中に眠っていた。
「あれ? 私は・・・?」
寝ぼけてしまったのか珠子は自宅の布団で眠っている感覚に陥っていて洋介の寝室のベッドだとは全く頭になかった。
「まだ眠い・・・ん?」
目をしっかり開いて今自分が置かれている状況を頭の中で整理する必要があったようで、珠子の顔はだんだんと青ざめていった。
いつの間にか眠っていた珠子は何故か洋介に抱きしめられながら眠っていたのだ。
それも、セミダブルのベッドで。
一人で眠るのにはゆったりして丁度良いサイズだろうが、二人で眠るには少々狭い。
だけど、男女二人が抱きしめあって眠るのには丁度良いのかも知れない。だからではないだろうが、洋介はしっかり珠子を抱きしめて眠っていた。
以前は夫婦だったから一緒に同じベッドで眠っていた。けれど、今の洋介は他の女のものなのだから今の状況は絶対に不味いと珠子は慌ててベッドから下りようとした。