女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~
私はコクン、と頷く。
「子供は、大丈夫だったけど。でも産科の先生にレイプされたのかと心配された」
ううう~・・・とガックリ肩を落として、彼は一瞬で凹んだ。足も止まる。
「・・・・そりゃそうだよな。よく無事だったな。自分で思い返しても、あれは酷かった・・・」
私はちょっと微笑んで、手をひっぱって歩行を促す。
「私も子供も生命力が強いのよ、きっと」
彼は歩き出したけど、ブチブチ言っている。
「せめてあれの前に言ってくれたらよかったのに・・・」
「いつ言えたの?」
私は呆れて彼を見上げる。
「ん?」
「電話をかけたらあなたは一方的に話して18秒で電話を切った。ベッドに連れ去られてからは一言だって喋らせてくれなかった。それで、一体、いつ言えるの?」
ぐっと詰まる。そしてまた低く唸っていた。
「妊娠が確定するまではもしもを考えて言いたくても言えなかったし、その間にもあのバカ女からの攻撃があって私はストレスが溜まっていた。繁忙期が始まる前に仕事の事もどうにかしなきゃだし、あなたはバカ女を庇ってわからず屋になっていた。だから、出て行ったのよ」
・・・それに。
「それに、私、あなたに言った。子供が出来たって」
桑谷さんが、え?と私を見下ろした。