女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~


「・・・砂だらけになるぞ」

 彼が言う。私はそれを笑い声で打ち消した。

「砂浜なんだから、当たり前でしょう!」

 手で砂をすくっては飛ばす。それを、飽きもせずに繰り返していた。

 彼は水際で水平線を眺めている。私はたまにそれを目で確認する。

 時間が経って、空が赤に染まり始め、夕焼けの時間になった。その美しいグラデーションを顔を上に向けたままでひたすら目に焼き付ける。

 何て、綺麗な。

 この世界は本当に美しい。

 砂を踏む足音がしたと思ったら、彼が近くまできていた。

「・・・そろそろ戻るか?」

 ホテルを指差す。

 私は無視して前に座れと砂浜を手で叩く。苦笑した後で仕方なく、彼も靴を脱いで私の前に座った。

「ねえ、名前何にする?」

「うん?」

「男でも女でもどっちでもいい。でも名前は決めておけるじゃない?何がいい?」

 いきなりそんなこと言われてもな・・・と彼は頬をかいていた。

 夕日が目に入って、眩しくて閉じる。

 子供の名前に関しては、両実家にも聞いたのだ。つけたければ、どうぞって。すると両方から、あなた達の好きな名前を、と返事が来た。

 彼にそれを伝える。


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