女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~


 どこにいてもすぐ取るから、と宣言していた通り、彼はすぐに電話に出た。

 丁度えぐい痛みの波に耐えてる時で、私は声が出せずに苦しむ。

『・・・まり?大丈夫か?』

「大丈夫じゃねえよ!!」

 思わず怒鳴ったら、見かねた助産師さんが私から携帯を奪い取り、そろそろですから病院にいらしてくださいね、と優しく告げていた。

 分娩台に転がされた時には、もう、妊娠まで遡って後悔した私だった。

 しくったああああ~・・・・!!やっちゃったよ、私!何であの時中だし許してしまったんだ!?やめときゃよかった~!!とか。

 畜生、野郎はいいよな、あいつらは快感だけで終わるけど、女はその結果がこれなんだぞう!!とか。

 きっと彼がいたら罵詈雑言浴びせていたに違いない。居なくて良かった、彼のために。

 産むのは、超安産だったらしい。助産師さんも先生もそう言っていたから、多分そうなんだろう。かかった時間は30分くらい。

 だけど私には3日くらいの苦しみに換算された。

 私があんまりぶーぶー言うので、先生が、これこれ、と注意したのだ。

「赤ちゃんが一番頑張ってるんですよ!」

 って。そんなわけあるかい!私は速攻で言い返した。

「私の方が絶対頑張ってます!!!」

 だって、ヤツ(赤ちゃんのことだ)は今意識なんかねえだろうが!!私はリアルに意識があるんだぞう!!何賭けてもいいけど、出産で一番頑張るのは母親だ。絶対そうだ。


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