女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~


「・・・悪気はないと思う。何かにつけ、そんな言い方をする人なんだ」

 またあの感覚が蘇った。違和感だ。何かに反応して、ちりちりと私の胸の奥で音がなる。

 私は目を瞬いて、上半身を起こす。

「同僚って言ってたっけ?」

「そう」

「あの人と、何があったの」

 彼がゴロンと寝転んだ。両手でごしごしと顔を擦っている。そして長いため息をついた。

「・・・別に、何も」

 ―――――――ものすごーく、信用ならない。この答え方。

「怒りませんから、気持ち悪いから言って。どうして私はいきなり目の敵に?」

 彼はうう~と低い声で唸っていた。

「・・・眠いから、明日にしないか?」

「人を起こしといてその言い草はなんなのよ。ダメ、気持ち悪いから、話して。私の夢見が悪くなりそう」

 私も唸る。

 ・・・畜生、と呟きが聞こえて、彼は目を閉じたままで言った。

「・・・あっちの店で一緒だった時、何回かモーションかけられた。だけど彼女は人妻だったし、興味がなかったから相手にしなかったんだ」

 はい?今なんて?

「人妻?あの人結婚してるの?」

「・・・してた、だ。もう離婚してる。同じ売り場の吉田さんて社員がダンナだった」

「そんな環境にいて、あなたにモーションを?」

「そう」


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