女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~
「毎日見てるのに、何ポカンとしてるんですか?結婚したならダンナのお母さんにもプレゼントをあげないと。嫁の役目ですよ」
既に子供が二人もいる28歳の竹中さんが言う。当然です、と腰に手をあてていた。
「・・・母の日、一度もしたことない」
私の呟きに更に呆れた様子だったけど、彼女は開けた口を一度閉じてから猛攻撃に出た。
「自分の母親はともかく!ダンナの親にはしなきゃです!桑谷さんのお母様って何が好きなんですか?」
・・・知らねーよ、そんなこと。心の中で突っ込んだ。
結婚してから、私の休みの日には割りと頻繁に遊びに行っている。彼はいたり居なかったりするが、無愛想な息子が居ない方が話が弾むと桑谷家の母が思っていると判ってからは、私一人で会いに行っていた。
一人息子の桑谷さんが長年音信不通だったのもあってか、私がいくと瞳をキラキラさせて喜んでくれるのだ。そして、二人でお茶を飲んでいる。
だけど好きなものなんて知らない。うううーん・・・。
母の日と来たか・・・。これが、結婚するってことなのね。家族同士の付き合いというもの・・・。
私は竹中さんを見て言った。
「・・・でも要するに、感謝を伝えればそれで成功なんでしょう?」
「まあそうですね。値段ではないことは確かです」
だって2000円のお菓子ってどうよ、花も買ったらいくらになるのよ、もう、とついでに自社商品に突っ込んでいた。
私はうーん、と唸る。