女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~


「では応援を頼まなきゃね。体調は大丈夫なの?それと、仕事は続けるの?」

 私ははい、と頷いた。

「準社員では産休も育休も取れませんでしたよね、確か。だから一度は辞めることになると思います。だけど、遠い日になっても、こちらには戻って来たいんです」

 店長も頷く。

「戻って来てくれたら嬉しいわ。だけど、先のことは取りあえず置いておいて、今月のシフトは大丈夫そうかしら?」

 それなんですが・・・と私は一度深呼吸をして、福田店長を見詰めた。

「・・・嫌がらせの、ストレスが出ているらしいんです」

 医者からはストレスに感じるようなことは極力さけるべし、と言われただけだが、それを大きく大きく解釈して、つまり、ここに来なければ嫌がらせも受けないんだよね、ということにしたのだ。

 ストレスはよくない。だけど仕事にいけば嫌がらせを受ける。よって、仕事に行けない。

「今週様子を見て、と言われたので、出来ればでいいんですが、明後日と明々後日の勤務をどなたかと代わって貰えないでしょうか。来週かその次かで穴埋めは必ずしますので」

 私にいたく同情したらしい優しい店長の顔が曇る。私が受けている嫌がらせを誰よりも心配してくれたのは彼女だった。

 そして顔を上げて、きっぱりと頷く。

「大丈夫よ、大野さんと竹中さんとも相談するけど、無理なら他店から応援を呼ぶし、私は入れる」

 心底から申し訳ないと私は頭を下げる。店長は笑ってまた肩を叩いた。

「・・・予感がするんだけど、小川さん桑谷さんには妊娠をナイショにしてるんではない?」

 おおっと。私は目を瞬いた。・・・・バレてるし。


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