女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~
電話を切って、昨日の夜の足りてない睡眠を昼寝で補充していたら、ピンポーンとチャイムが鳴った。
目覚めて一瞬ここがどこだか判らずに呆然と見回したけど、またチャイムが鳴ったのでハッキリと覚醒した。
ドアを開けると母が居た。
「来たのね」
私は笑う。母も笑って言った。
「来たわ。久しぶりね、まり!私達はお前のダンナさんに一度も会わないまま、娘の家出を手伝う羽目になってるわ!」
実に楽しそうに言った。
今年の1月に入籍してから、実はまだ実家に彼を連れて行っていない。桑谷さんはそれをすごく気にしているけど、電話するたびにうちの両親が正月の帰省でいい、と言うのだ。
私はただ単に面倒臭いから、親の言葉通りでいいか、と思っている。ケアしなければならないのは気楽に二人で好きなことをしているうちの親ではなく、そっちの親でしょ、と思うのだ。
色んなことをペラペラ喋りながら部屋に入ってきた母が、真ん中でくるりと振り向いて、私をマジマジと見詰めた。
「・・・まりったら」
私は欠伸を一つして、眠気を払っている最中だった。そのままの格好で、うん?と母を見る。
「もしかして、妊娠したの?」
ビックリした。・・・・何で判るのよ。本当に、女性って性別は全員恐ろしい。
「・・・どうして判るの?」
私の問いかけにニヤリとした。
「じゃあ本当なのね!?」
「いや、だから、どうしてよ?まだ外見の変化ないでしょう。私だって昨日ハッキリ判ったとこなのに」