女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~


「はい」

「回し蹴りはダメ」

「うん」

「お酒もね」

「我慢してるじゃない」

「ピンヒールもよ」

「3センチで妥協するわ」

 何だ?と思って答えていると、目の前で母が艶やかに笑った。

「やっと孫が見れるかと思って、今私はすごく喜んでいるのよ。でもお父さんにはもうちょっと内緒にしておきましょう、簡単に教えちゃつまらない」

 ええ、間違いない。私はこの人の娘だ。

 それによく考えたら、この人は私が法律的に結婚出来るようになった16歳の時から、私の結婚資金を貯めていた人なんだった。孫の顔を見れるまで、倍の16年も待ったわけだな。

 企んでキラキラしている母を見る。そのうちじんわりと喜びが湧き上がってきた。

 この子は、祝福されているんだ。それが嬉しかった。


「それで、どうしたらいいと思う?」

 コーヒーをパスして部屋に戻ってから、私は母に聞いた。母は機嫌よく、簡単よ、と笑った。

「彼女の過去を調べなさい。絶対なにか出てくるはず。それで脅してやったらいいわ」

「・・・・・」

「それか、同じく陰険な嫌がらせをするか。それとも・・・あ、そうだわ!」

 手をパチンと叩いて声を上げた。

「格好いい男の人に頼んで、誘惑させて、捨てさせるのよ!」

「―――――――」


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