女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~
何度も繰り返し繰り返し彼は私を翻弄する。私の意識は飛びっぱなしで空中を漂う。一体何が起きているのか判らないほどの、それは容赦のない行為だった。
ようやく疲れきった彼が眠りに落ちた午前1時、夕方から今までで何度か気を失っていた私は枕元の水に手を伸ばした。
体がうまく動かない。手も足も痺れて力が入らないのだ。のびきったゴムのようになった体を懸命に動かして、何とか水を取る。
砂が水を吸収するのと同じ速さでそれを飲み干した。
激しくて遠慮や気遣いの欠片も見えない行為だったけど、気分は悪くないし吐き気もなく出血もしていなかった。
それを確認して、私もぐったりと転がる。
ああー・・・良かった、出血してなくて。危ないところだった、と、今更ながら冷や汗をかく。
心の中でお腹にむけて話しかける。
よく頑張ったね、君は偉い!!
安静とは程遠い6時間だったけど、母子ともに激しすぎる父の愛情表現を受け入れることに成功した。
私は少し笑って、そのまま夢に落ちて行った。
夜明けだった。
開けっ放しのカーテンから忍び込む早朝の冷気に裸の肩が寒くて、私は目を覚ます。
取りあえずまた出血の有無を確認して、ないことに安心してから同じく裸のままうつ伏せで寝てしまった彼の肩にもシーツを引き上げる。
その無防備な寝顔をぼんやりと見詰めていた。この人の傍にいると、激しかったり緩やかだったりはその時々で違っても、とにかくあったかい・・・。