女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~
3、ごめんで済めば警察は要らない
頬を大きな手で撫でられる感触に私はうっすらと目を開けた。
「ごめん」
そして、ボーっとした頭で彼が本日最初に口に出した謝罪を聞いた。
・・・あれ?今日謝罪と理由を話さなきゃならないのは私じゃなかったっけ?などと思って、眠い瞳をごしごしと擦る。
また彼の低い、しかも凹んでいるらしい声が聞こえた。
「ごめん」
「・・・うん?」
私は欠伸を一つする。
「何謝ってるの・・・?」
まだ寝ぼけた頭と顔を彼に向けた。そこには痛そうな顔の桑谷さん。
「俺、昨日無理にしすぎたな。血が出てる」
バチッと目が覚めた。
―――――――血っ!???
ガバっと凄い勢いで私が起き上がったので、彼は驚いてのけぞった。
下半身を横たえていたシーツをざっとチェックする。だけどどこにも血なんて見当たらないぞ!?と思って桑谷さんを見たら、彼は私の太ももを指差した。
「―――――・・・」
確かに、たしかぁーに、若干の出血が確認出来た。ほんの1、2滴だろうが、彼も凹む位なんだから血なんだろう。
私はそれを確認すると黙ったままでするりとベッドを抜け出して、人生最速で服を着る。財布が入っているポーチだけを引っつかみ、ドアに向かって歩きながらまだベッドの上で呆然としながら私を目で追っている彼に一気に喋った。