鋭い彼等のことだから
「あのさぁ……」
皐月を見つめ、間延びした声で尋ねた。
「私のどこが好きなの?」
布団に寝転んだ皐月は、少し悲しそうな顔をして、毛布を体にかけた。るりのほうに体を向ける。
「……そういう質問あんまり好きじゃない」
「どこが好き?」
「意地悪だよね、るりって」
るりも布団をかぶって、体を皐月に向けた。枕元のランプは、オレンジの光で二人を優しく照らしている。
「俺、ずっとるりのこと好きだったんだよ?生まれたときから、多分。好きって気持ちだけじゃだめなの?そこ明確にしないとだめ?」
「ごめん。だめじゃない。きっと私も同じようなこと聞かれたら、皐月と同じような反応すると思うし。私も意地悪なこときいたと思ってる」
ずっと仲の良い恋人でいたいなら、お互いの好きなところをいちいち口に出して言わないことが重要である。優しいところ、外見が美しいところ、家事が得意なところ……きっと恋人に対して『だから』好きというところがあると思う。そしてそれを口に出してしまったなら、言ううちが、言われるうちが花となってしまうのだ。長く付き合って優しくなくなってしまったら?老けて美しくなくなってしまったら?少しでも家事がおろそかになってしまったら?口に出す言葉にはそれなりの力が含んでいる。一度口に出してしまったら、恋人がその状態でなくなったとき、悲劇の別れは突然訪れることになる。『だから』好きが、『だから』好きだった『のに』に変わるのだ。彼等はそれをよくわかっていた。そして彼等はこの関係がいつまでも続くことを望んだ。彼等は幸せだったし、その幸せをそんな言葉ごときで壊したくなかったのだ。二人の感情は、若いなんて言葉で表せるほど単純で情熱的ではない。意外に冷静で、いつかこの関係が簡単に壊れてしまうかもしれないことに怯えるほどだった。だから彼等はお互いに気を使っているのだ。それは時に異常とも言えるようなものであったとしても。
皐月を見つめ、間延びした声で尋ねた。
「私のどこが好きなの?」
布団に寝転んだ皐月は、少し悲しそうな顔をして、毛布を体にかけた。るりのほうに体を向ける。
「……そういう質問あんまり好きじゃない」
「どこが好き?」
「意地悪だよね、るりって」
るりも布団をかぶって、体を皐月に向けた。枕元のランプは、オレンジの光で二人を優しく照らしている。
「俺、ずっとるりのこと好きだったんだよ?生まれたときから、多分。好きって気持ちだけじゃだめなの?そこ明確にしないとだめ?」
「ごめん。だめじゃない。きっと私も同じようなこと聞かれたら、皐月と同じような反応すると思うし。私も意地悪なこときいたと思ってる」
ずっと仲の良い恋人でいたいなら、お互いの好きなところをいちいち口に出して言わないことが重要である。優しいところ、外見が美しいところ、家事が得意なところ……きっと恋人に対して『だから』好きというところがあると思う。そしてそれを口に出してしまったなら、言ううちが、言われるうちが花となってしまうのだ。長く付き合って優しくなくなってしまったら?老けて美しくなくなってしまったら?少しでも家事がおろそかになってしまったら?口に出す言葉にはそれなりの力が含んでいる。一度口に出してしまったら、恋人がその状態でなくなったとき、悲劇の別れは突然訪れることになる。『だから』好きが、『だから』好きだった『のに』に変わるのだ。彼等はそれをよくわかっていた。そして彼等はこの関係がいつまでも続くことを望んだ。彼等は幸せだったし、その幸せをそんな言葉ごときで壊したくなかったのだ。二人の感情は、若いなんて言葉で表せるほど単純で情熱的ではない。意外に冷静で、いつかこの関係が簡単に壊れてしまうかもしれないことに怯えるほどだった。だから彼等はお互いに気を使っているのだ。それは時に異常とも言えるようなものであったとしても。