鋭い彼等のことだから
男には少しきつく感じるものがあるかもしれない。中心に置かれた大きい白テーブルと、部屋の隅に置かれたホワイトボードがここがミーティンルームであることを主張していた。


 和歌子が二人分の紅茶を持って戻ってくる。一つを哲の前に置いて、和歌子は哲の斜め前に座った。




「お昼は食べたのぉ?」




「このあと食べに行く」




哲は目の前のカップを手に取り、紅茶を一口飲んだ。しばらく紅茶をじっと見つめた後、再び口をつけた。和歌子の紅茶はローズティー。哲にはブルーベリーをいれた。和歌子は哲を見つめて尋ねる。




「おいしいの?」




「おいしくない」




哲が即答したとき、受付に繋がっている引き戸が開いた。二人は必然的に受付のほうを見る。そこには休憩時間に入った皐月が立っていた。皐月は哲を見て顔を歪める。




「げっ」




「げってなんだ、げって」




皐月と哲は格段仲が悪いわけではなかったが、仮にも父親と娘の恋人という関係だ。それなりに距離感が生じていても仕方なかった。












          *












 なぜか皐月は哲の隣に座ることになった。目の前には、和歌子がいれてくれたオレンジティー。




「嫌なら和歌子の隣に行ってもいいんだぞ?」




「嫌だなんて思ってませんよ」




和歌子は目の前の二人を見てにこにこと笑う。そして何かを思い出したように口を開いた。
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