鋭い彼等のことだから
猫のような瞳で、猫のように気だるげな彼女は常にマイペースだ。少し寝癖のついた髪を手ぐしで整えてあくびをする。

そしてのそのそと着替えをするために自室へと向かった。皐月はただでさえ細目なのだが、そんなるりを見ると不覚にも目が線になる程に微笑んでしまう。



      *



 朝ごはんも終わり、皐月は仕事着に着替え、台所で何かしら作業をしていた。るりはソファの上に丸まりながら、朝のニュースをのんべんだらりと眺めている。

赤いひざ下丈のワンピース。化粧の終わった後の顔もなんだか気だるげである。

ソファの前には2人の通勤・通学用バッグ。同じ年齢ではあるがそれぞれ立場が違うのだ。


 テレビでは今時の恋愛についての特集がなされている。るりは少しつまらなさそうな顔をした。




「……おかしいと思うの。相性の良し悪しは理解できる。だけど価値観が一緒の人がいいって言うのはおかしいと思うの。確かに自分がされて嫌なことを相手もわかってるっていうメリットがある。でもこれって恋愛におけるメリットなの?だって……」




自分が持っていないものを相手が持っているからこそ、好きになるものじゃないの?




「るりってテレビとお話しするタイプなんだね」




気付けばソファの後ろに皐月が立っていた。




「違うの。ただの独り言」




皐月の瞳が線になる。皐月はピンクのちょうちょ柄のハンカチで包んだお弁当を差し出した。

気だるげに受け取りながらもお礼を言うるり。




「ありがとう。わざわざ毎日ごめんね。忙しいのに……」




「いいの。俺が好きで作ってるから」




「……皐月のぶんは?」




皐月はバッグをひょいと肩にかける。




「え?売店あるから」
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