鋭い彼等のことだから
「……じゃあ私のためだけに作ってるんだ?」




「だって。るりちゃんには添加物詰まった市販品より俺の愛のつまったお弁当食べてほしいもん」




のほほんと目を細める皐月。るりは皐月の言葉に何も返すことなく、気だるそうにカバンの中に入れた。

それを確認した皐月は、バイクの鍵をもって部屋を出る。




「いってきまーす」




「いってらっしゃーい……」




るりは気だるげにもう見えない皐月の背中に手を振った。






     *







 お昼時。まだ昼休みの始まりを告げるチャイムは鳴らない。

大学の四号館ラウンジには、少しばかり人がいる。今はまだ、友達同士での雑談だとか、自前のパソコンでのレポート作成だとかでまったりしている者が多いが、昼休みになれば、昼食をとる者達で座る場所がなくなり、騒がしさも今と比べようがなくなってくるだろう。


 るりは、良くも悪くも目立つ存在だった。長身で、モデル体系とまでは言わないが、スタイルは悪くない。

黙っていればそれなりに男性受けするような顔。長身だからこそ着れるような洋服を着る。

ただでさえ集団生活を強いられるような幼児教育専攻の中で、一匹狼を気取っているような振る舞いをする。他の学科・学部の学生からしてみたら、否、同じ幼児専攻の学生からしてみても、異質な存在だった。


 現にまだ二時限目は終わっていない。それまで雑談をしていた学生は、彼女の存在に気付いた。




「……」




「どうしたの?」




「…いや、あの先輩また捨ててるなって」




ラウンジのゴミ捨て場には、赤いワンピースのるりが立っている。見ている学生側に背を向けて何かを必死に叩く音を立てながら捨てている。 
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