キミと初恋、はじめます。
「翔空はさ」
寝てる翔空の頬をツンツンとつつきながら、祐介くんは珍しく真面目な顔をする。
「昔からそうだった。女には見向きもしねぇで、人と関わることも好まない。自分の気持ちのままに動く自由な奴」
「……うん」
「でも、肝心な所は素直になれねぇんだよな。人一倍、寂しがり屋なのに甘えられねぇ。甘えられる奴がいなかったんだよ」
どういうことだろう。
あたしは眉を寄せて言葉の続きを待つ。
「幼い頃に父親を亡くして、母親は学校経営で忙しかった」
「…………っ」
────〝父親を亡くして〟。
その言葉が、あたしの上にあまりに重くのしかかってきた。