キミと初恋、はじめます。


「逃げてたのは、俺」


「え?」


「俺は、ずっと色んな事から逃げて生きてきた。 自分の気持ちに素直に生きてるって言ったけど、そんなの言い訳でしかない」



翔空の言葉……。


『自分の気持ちに素直に生きてるだけ』


確か翔空は、あたしと初めて出逢った時、そう言った。

誰かに指図されて生きるのは疲れるって。



「シキに自分勝手な事、言った。だから嫌われたかと思って、この恋から逃げようと思った」


「え?なん……」


「だってシキ、昼休み俺から逃げたでしょ」



……そうだった。


あたし、翔空と顔を合わせるのが嫌で逃げたんだった。


でも嫌いになったわけじゃないのに……誤解、させてたんだ。



「……ごめんね?」


「……謝るのは、俺の方なのに」


「誤解させるようなことしたの、あたしだもん」



あたしが翔空に嫌われたんじゃないかって悩んでた時に、翔空も同じ事を悩んでたんだ。


すれ違っちゃった、だけなんだね。



「ごめん、シキ」


「……それは、なにに?」



ギュッとさらにあたしを抱きしめる力を強めた翔空に、優しく聞き返す。
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