キミと初恋、はじめます。
「なんでって、王子がいるなら姫も必要でしょうが。あのクラスで姫になれるのなんて、詩姫しかいないわよ」
さも当たり前、というように言ったなっちゃん。
あたしは面食らって眉尻を落とす。
「ま、皆でコスプレも悪くないんじゃね? 翔空にはメイドでもさせてさ」
「誰がメイドなんてやるかっ!」
「どーせ、なんかやらないといけないんだろ? ちなみに、俺のクラスはクレープ屋だから差し入れ持ってってやるよ」
クレープ!?と目を輝かせたあたしの頭を撫でた祐介くんに、翔空がムッとしたように眉を寄せた。
「ゆーすけ、シキに触るな」
「へいへい。ったく、ヤキモチ妬きの彼氏は大変だね、シキちゃん」
いつもと変わらないこの雰囲気。
やっぱり好きだなぁ……と実感する。
昔から一緒にいるこの3人に、あたしが混ざっていいものかと思う時もあるけれど。
のんびりして無気力な翔空が、なっちゃんや祐介くんといると、色んな表情を見せてくれる。
怒ったり拗ねたり笑ったり。
この表情を見るのが、あたしは好きなんだよね。