キミと初恋、はじめます。
◇翔空side
「……あれ?」
ふと腕の中を見ると、シキは俺に身を委ねたままスースーと寝息をたてていた。
「…ほんと、無防備」
長いまつげが伏せられて、どこか幼さの残るその顔立ちは人形のように整っている。
シキが寒くないように、着ていたジャケットを脱いでかけてあげてから、俺は起こさないように立ち上がり屋上を後にした。
さっきの詩音さん……
いつもと様子がまるで違った。
慌てて病院に駆けつけた時、詩音さんの他に詩織さんともう一人。
厳格そうな人がいたけど、あの人は状況から察するにシキの父親だろうな。
でも詩音さんは、目も合わせようとしなかった。
ただ、俺に向かって
〝シキのそばにいてやってくれ〟
〝シキにはおまえが必要なんだよ…〟
……それだけ言って、仕事だからと足早に病院をあとにしてしまった。