キミと初恋、はじめます。
「今、帰りかい?」
そう笑顔で聞いてきた伊達せんせーに頷いてから、病室の方をちらりと振り返った。
「……シキの検査の事、伝えておいたので」
「そっか、それはありがたいな。俺から伝えるよりも、彼氏くんからの方が良いだろうしね」
「…シキ、大丈夫なんですか」
我ながら、態度冷たいなーとは思う。
あまり俺が人付き合いが好きじゃないから、初対面の人には大抵こうなるんだけど。
でも伊達せんせーは、そんな事気にも止めない様子で頷いた。
「喘息発作に関しては、恐らく酷くなってるね。……東京はあまり空気が綺麗じゃないからな。身体がついていってないんだよ」
「……薬は」
「明日の検査次第で決めるよ。ははっ、そんなに心配せずとも大丈夫。ここにいる間は、いつでも対処出来るからね」
ポンッと俺の肩を軽く叩いた伊達せんせーは、そのまま横を通り過ぎて病室に入っていった。
俺も振り向くことなく、止まっていた足を動かす。
たまに自分でも二重人格なんじゃないか、と思う時がある。
シキといる時が、多分俺の一番の素で。
それ以外の俺は多分相当冷たい。
まぁ別に、俺にはシキがいればいいんだけどね。
そう考えてから、僅かに顔を歪めた。
ただ今気になるのは、シキの涙の跡をみてから止まらないこの胸騒ぎ。