キミと初恋、はじめます。
そこまで考えて、ひとりで苦笑した。
静かだからか、いつもよりも思考が澄みわたっていて止まりそうにない。
帰るためのタクシーを探すために、また歩き出そうとした。
「翔ー空くん」
「え?」
「おつかれ」
声がした方を振り返れば、車に寄りかかる詩音さんの姿。
思わず顔をしかめる。
「詩音さん、仕事どーしたの?」
「さっき終わった。気になったから、また来たんだけど…ちょうど良かったな。送ってくから乗ってけ」
「えー、じゃ、遠慮なく」
助手席に乗らせてもらい、発進した車では、しばらくお互い無言だった。