キミと初恋、はじめます。


「十一月だ、転勤は」



……はやいな。

ついこの間転校してきたばかりなのに。



「でも、シキはついて行かない、と思う」


「え?」


予想外の事実に俺は思わず聞き返した。



「さっきその事を知ったシキが、自分で言ったんだ。今まで一度も、父さんに口答えした事なんてなかったのにな」


「……シキが泣いてたのは、それが理由?」


「いや、違うな。それもあったかもしれないけど、シキが泣いたのは俺の責任だ」



詩音さんの、責任?



「俺を父さんから庇ったんだよ。……シキが怒鳴った所は、俺も初めてみたけど」



父親が、原因か。

なんとなく予想はついていたけど……。


シキが怒鳴るほどというのが、なかなかに想像しにくい。



「……まあ、父さんの事はどうでもいい。転勤については、また話し合いになるだろうが。……あの様子じゃ、シキは何があろうがここに残るだろうな」


「…………」


「心配すんな。家でのシキは俺が護る。あいつの望むままにさせてやりたいし、こっちにいた方がシキにとっても良い」


「……そーだね」



こっちに残ると決めた理由なんて、聞かなくてもわかる。

俺や夏、祐介……そして詩音さんがいるから。


でも何かが引っかかる。


このよくわからない不安感と胸騒ぎは…


気のせい……?
< 284 / 418 >

この作品をシェア

pagetop