キミと初恋、はじめます。


結局それからは、俺の家につくまで何も話さずにただ静かな時間が過ぎた。



「ありがとー、詩音さん」


「いや、こっちこそ遅くまでありがとな。また何かあったら、連絡してくれ」


詩音さんと別れて、家の扉を開ける。



「おかえりっ」

「……母さん、起きてたの?」


玄関まで出てきた母さんに、驚いて目を見開く。


もう深夜1時をまわってるのに、なんで起きてるんだ?


疑問が頭の中を飛び交う。


「詩織から連絡あったのよ。シキちゃんの事、翔空が見てくれてるからって」


「あー、なるほどね」


「で、シキちゃんは?大丈夫なの?」



リビングのソファに倒れ込むように寝そべった俺に、母さんは心配そうに尋ねてくる。



「とりあえず今はヘーキ。でも明日の学園祭は出れないっぽい」


「そう……残念ね」



シキもすごく残念そうな顔をしてた。

夏とか祐介も、きっと心配するだろーな。


問いただされそうだ…とか思いながら、俺は瞼を閉じた。



「あ、こら!寝るんだったら自分の部屋で……」


「……スースー」


「ったくもー!」



遠くで母さんの声が聞こえるけど、構わずに俺はそのまま眠りに落ちた。
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