キミと初恋、はじめます。
「響、華沢相手だとよく話すよな」
「ここに翔空がいたら、やばいわね」
「視線だけで殺されるだろうな」
「……冗談に聞こえないからやめましょ」
なっちゃんと野村くんの会話が聞こえてきたけど、よくわからなくて首を傾げる。
「あ」
「……うん?」
突然声をあげたあたしに、響くんが不思議そうに首を傾げた。
あたしの視線の先、ビルの大きな広告電気版にはよく知る人物が歌っている姿が映っていた。
「あら、シキのお兄さんじゃない」
「うん!お兄ちゃんね、歌手デビューする事になったんだよ」
「マジか!すげぇじゃんっ」
この間の学園祭で、ちょうど取材に来ていた報道の人達によって、お兄ちゃんの歌はテレビで流されたんだよね。
……もちろん、あたしも。
それを見た関係者の人からオファーが入ったんだって!
あたしも一緒にって言われたけど、それは丁重にお断りした。