キミと初恋、はじめます。


「お兄ちゃん、さらに忙しくなったみたい」



この間電話で話した時、すごく嬉しそうに報告してくれたんだ。


お兄ちゃんの夢だったんだもん。


歌手デビューを聞いた時、あたしもすごく嬉しかった。




「んー、やっぱり俺、華沢の歌もう一回聞きたい!って事で、カラオケ行こうぜ!」


「カラオケ…なっちゃん行ったことある?」


「あるわよ、もちろん」




即答で返ってきた答えに「そ、そうですか」と答えてから、響くんを振り返る。



「響くんはある?」


「……いや、無い」


「ほんと!?なら、あたしと一緒だね!」



なんだかんだ、響くんと似た者同士な気がする。


響くんのあたしを見る目ってすごく優しいんだよね。


妹でも見てるような、そんな感じ。


響くんもすごく整った顔立ちだけど、クラスの子達は響くんには滅多に話しかけない。


怖いんだって。


こんなに優しいのに、わかってもらえないのは少し心苦しいけど、当の本人はそれが楽らしい。



もったいないなぁ……


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