キミと初恋、はじめます。


「ごめんね、響くん」



あたしは左足に重心をかけて立ち上がり、響くんに向き合うと、首を振った。



「あたし、翔空が好きなの」




その言葉に、翔空がバッと顔をあげる。

そんなの翔空もわかってるはずなのに。



「……心からの答え?」


「もちろん」


「……ん、ならいい」



小さく微笑んだ響くんも、きっとあたしの答えなんて聞かずともわかってた。



それでも今ここで、あたしに伝えてくれたのは、翔空のためでもあるんじゃないのかな。




「……先輩、いつまでそんな顔してんですか。俺、隙さえあれば、マジで奪いますから」



「っ……うるさいなー。後輩のくせに」



「……覚悟しといて下さいって事です」



「シキは、渡さない。俺の大切なカノジョだからね」



いつもの調子に戻ってきた翔空をみて、あたしもホッと安堵する。



「ありがとう、響くん」



翔空の事、響くんなりに励まして背中押してくれたんだよね。



「……別に俺はなにも」



いつもの無表情に戻ってそう言いのけた彼に、あたしはクスッと笑みをこぼした。

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