キミと初恋、はじめます。
番外編
夏菜side
「……ったく、あんたって子は」
私は電話越しにいる相手に深いため息をついた。
詩姫が急にいなくなって2週間。
翔空が昨日の晩ここを経って、それを見送ってから数時間後。
昼過ぎに翔空のスマホから電話がかかってきた。
けれど、電話に出たのはスマホの持ち主の翔空ではなく、恐らく一緒にいるであろう詩姫だった。
もちろん私だって心配だったし、話してもらえなかった友達としての不甲斐なさもあったからか…
詩姫の声を聞いた途端、少しばかり涙が出てしまった。
『ごめんね、なっちゃん……。ほんとごめんなさい……っ!』
「あんたが無事なら、私はそれでいいわよ。……でも、一つ聞いていい?」
私はね、詩姫。
私だけかもしれないけど、あんたのこと親友だって思ってたのよ。
私だけじゃない、祐介だってそう。
「……なんで何も話してくれなかったのよ」
一番話すべき、翔空でさえも。
何も伝えずに急に目の前からいなくなった。
わかってるつもり。
きっと詩姫は、なにか思う事があって言わなかったんだって。
でも、それでも……