キミと初恋、はじめます。


ひとりコクコクと頷いていると


「シキー?あんた、昼ごはん食べたのー?お腹空いてるなら何か作るけど」


と、扉をたたくお母さんの声。


ちょうど良かった!


このまま翔空の声を聞いてる事なんて、あたしにとってはもう苦しいだけだ。


……名残惜しくなんかない!


そう自分に言い聞かせ、あたしは翔空に伝える。



「翔空、あたしお昼ご飯だから……き、切るね!」


『そっか、なら仕方ないね。ちゃんといっぱい食べるんだよ?』


「う、うん!」



はやく大きくなれよって言われてる気しかしないのだけれど、それはもう置いておこう。



『ん、いい子いい子。電話ありがと、声聞けて嬉しかったよ。また明日ね?』


「ううん……あ、あたしも翔空の声聞けて良かった!また明日ね!」



〝また明日〟


その言葉が、すごく温かくて。


やっぱりどうしても感じてしまう名残惜しさを打ち消して、あたしは電話を切った。



ほんと、もうだめだ……あたし……。


はぁぁぁと深く溜息をついて、枕に顔を埋める。



「シキ?どうするの?」


あ、そういえばお母さんに答えてなかった!



「食べるー!」



とりあえずそれだけ答えて、あたしはまだ耳に残る翔空の声にギュッと締め付けられたままの心臓を抑えた。



こんなの、まるで……



────…恋、みたいだ。
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