ブリキのロボットは笑わない







次の日。いろんな人にあいさつをすることを目標に家を出たとこまでは良かった。

だけど、グループになって話す女の子たちに声をかけるって勇気がいることだ。


がんばれ、あたし。無視されるなんてことは、ないはず。


そう思うんだけど、なかなか難しい。結局、席に着くまでにあいさつできた子はいなかった。

このままだと、友達のいないさみしい1年になってしまいそう。


……仕方ない、かな。

そう思ったときに、後ろから「武内さんおはよう」と声をかけられた。


「あ、おはよう。椎名くん」


振り向くと、椎名くんだった。ちょっと席が離れているけど、近くに彼がいると思うとホッとした。


「おはよう。しーな。貸してたCDは?」

「あ、悪い。忘れた」

「もうさー、明日返してよ!?」


椎名くんの横にやって来た女の子と、スムーズにしゃべっている椎名くんを見てうらやましくなる。あれはたしか、クミちゃんだ。

やっぱり、あたしも自分から声をかけてみるべきだよね。


「あの、おはよう」


思いきって、あいさつをしてみた。名前を言い忘れたから、伝わってないかもしれないけど。

そのときはそのときで、なかったことにしよう。

手のひらに汗をかいてきた頃「もしかしてあたし?」と、クミちゃんが自分を指差した。


< 11 / 18 >

この作品をシェア

pagetop