ブリキのロボットは笑わない
「椎名くんも、座っても大丈夫だよ。イートインってわけでもないから」
「いや、それは大丈夫だけど。ブリキのロボットとかあるの、なんかすげー」
「昔ながらって感じだよね」
椎名くんはキョロキョロと見回しながら、感心している。この前は興味なさそうだったのに。
それはここがあたしの家かどうかってことだったっけ。
でも、ヘンなの。よくわからない人だなあ。
なにを考えてるんだろ。なにも考えてなさそうな気もする。
そのとき思ったままに動いて、思ったままを言葉にしていそうだもん。
「俺が小学生のとき行ってた駄菓子屋も、さすがにブリキのロボットはなかった」
「やっぱり、昔のおもちゃなのかな」
「どうなんだろうな。わかんないけど……って、あ?」
こちらを向いて、いきなり椎名くんの動きが止まる。
え、なに。どうしたの?
「え?」
「今、武内さん笑ってた」
「えっ、自分では気づかなかった」
「うわ、言うんじゃなかった。すげーもん見たのに」
悔しそうに言う椎名くんに、笑ってみせようと口角をあげてみる。
「今のはそんなんじゃなかった。こうなったら、絶対また笑わせてやる」
「ええっ、がんばって……?」
「ははっ、なんだそれ」
週末に友達と会うときに、楽しく話ができそうだ。面白い人がいるんだよって。みんなはいないけど、友達もちゃんとできたよって。
……それにしても、いい笑顔だなあ。
椎名くんの笑顔を見て、あたしもこんなふうに笑えるといいなあと密かに思っていた。
◎END◎